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JTBタイランドからご挨拶
- はじめまして、JTBタイランドの内藤と申します。
タイに来て7年が経ちました。タイで唯一の2030SDGs日本人公認ファシリテーターとして、SDGsの本質の理解と普及に務めています。
今回一緒にこのクラウドファンディングプロジェクトに協力いただいているのは、スリン県観光推進協会の石丸久乃さんです。石丸さんが初めてタイに来たのは2003年、スリン県での滞在は10年になりました。コミュニティツーリズムを通した日本の地域開発、タイの地方開発に携わり約15年、常に地域と共に歩んでこられました。
今までたくさんの交流事業を手掛けており日泰交流の架け橋をスリン県の屋台骨として活躍されています。どうぞ、宜しくお願いいたします。 -
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プロジェクト立ち上げのきっかけ
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象と象使い達の生活の変化
- タイに訪れた時、日本では到底味わえない象とのふれあいを経験した方も多いのではないでしょうか。実はその象たちが今危機に瀕しています。
コロナ禍が始まる前の2019年当時、2700頭の象が観光業に従事しており、象使いは一頭につき最低1名はいたといわれ、その家族を含めると、約1万人が象と関わりをもって共同生活をしていたと考えられています。 -
- しかしコロナの影響で観光収入は80%以上減少、各地にあるエレファントキャンプなどの観光関連施設は運営が難しくなり、月給40000円ほどのお給料と観光客からのチップなどで生計を立てていた象使いと象たちは収入源を失うことになり、約300頭と象たちを世話する象使いと家族が、生まれ故郷のスリン県の象村へ帰ることになったのです。
スリンの象村に帰ってきた象と象使いたちが地元で新しい生活をスタートするためには、象と家族の食料の確保、象とともに暮らすための労働力、場所、人間関係、公的や私的支援、そしてすべてを補える資金が必要で、すぐに解決できない問題や課題が山積みでした。 -
- スリン県の行政機構やタイ王国動物園機構は、月々の生活費や餌の支給、餌になる草を育てるための畑の提供などで、スリン県の象村で暮らすゾウたちの支援を行ってきましたが、あまりにもたくさんの象使いと象たちが故郷に戻ってきたため、彼ら全てに満足できる援助を提供することが難しくなってしまいました。
象使い達はこの苦境を乗り切ろうと、ユーチューブを活用した動画の配信やSNSでのサポーターやファンの獲得などに挑戦していますが、微々たる収入で一日一日を乗り越えているのが現状です。 -
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スックシーファミリーとの出会い
- タイ国内の動物園やエレファント・キャンプの中には、象を売却することを決断したところもありますが、スックシーファミリーも仕事を失い収入が全くない状況になっても「象は家族だから何があっても絶対に売らない」、「象は私達の家族」と決意を固め、10頭の象達とスリンの象村で暮らしていく道を選びました。
5歳の仔象「クリームちゃん」は、飼い主である少数民族グーイ族の象使い「スックシーファミリー」と他の6頭の象と共に、2021年にビーチリゾートであるパタヤからスリン県象村に帰ってきました。 -
- 私どもJTBタイランドは、タイ国政府とJICAがすすめていましたD-HOPE(コミュニティ起業家プロジェクト)のイベント参加をきっかけにスリン県観光推進協会と交流を持つこととなり、スリン県の象と象使い達の窮状を知ることとなりました。
この象たちの窮状をなんとか日本の皆様にも知ってもらいたいと思い、昨年11月にJTB主催のオンラインツアーをスリン県観光推進協会の協力により開催した際に、出演者としてご紹介を受けたのが「スックシーファミリー」と仔象のクリームちゃんでした。
仔象のクリームちゃんは、出稼ぎ先のパタヤでもその愛らしい姿が観光客に大人気で、スリンに戻ってきてからもユーチューブチャンネルのアイドルとしてたくさんタイの人がフォローしていました。 -
- 無料で開催したこのイベントで、仔象のクリームちゃんの愛らしい姿をご視聴いただいた大人からお子様まで、たくさんの皆様から予想以上のうれしいお言葉を頂戴し、イベントは大成功に終わりました。
間近にいなくても象とオンラインツールで触れ合うことでこれだけ多くの人に楽しんでいただき、幸せをお届けできるイベントはこれからも続けていかなければならないとの決意とともに、イベントを継続的に開催するには、多くの解決すべき課題に気づいたのです。 -
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スリンで実現したい、象との新たな共生のかたち
- このプロジェクトで目指したいのは、自分たちの生まれ故郷スリンで、象も象使いも家族と一緒に暮らしていくことのできる持続可能な社会を築きたい。ということ。
観光地で暮らす象と象使い達は、安定した現金収入を得ることができていましたが、その生活はスリン県象村での暮らしと比べてストレスの多いものでした。
コロナがなくなって観光客が帰ってきても観光地には戻りたくないという象使い達も多いのが実情です。スックシーファミリーも、「コロナが終わってももう出稼ぎはしたくない。パタヤには帰りたくない」と言います。
象も象使いも家族と一緒にスリン県で生きていきたいというのが彼らの夢です。
そのためにも、観光客がスリン県象村まで象に会いに来てくれるようになってほしいと願っています。 -
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- 今まで観光地で提供してきた象との記念撮影や、象乗り体験ではなく、観光客が象の生態について学び、象ともに暮らし、お世話のできるようなホームステイプログラムの提供を通して、象の負担にならない観光の形を作りたいと考えています。
そのためにはまず、10頭の象がストレスなく安心して暮らせる象小屋、そしてホームステイのできる家を建設したいと計画しています。
JTBタイランドは、スリン県観光推進協会の取組に賛同し、日本の皆様にこの状況を知っていただき、スリン県の象村に留まる決意をしたスックシーファミリーとその家族の象たちを、クラウドファンディングを通じて支援していくことを決めました。 -
象使い「グーイ族」のルーツと象との関係
- スリン県象村出身の象使いの多くは、南ラオスにルーツを持つ少数民族「グーイ族」で、先祖代々象と共存してきました。今は、野生の象を捕獲することは禁止されていますが、グーイ族の人たちは象を飼い続け、繁殖させ、今でも象と共に暮らしています。
彼らにとって象は「家族」です。家畜ではなく、生まれた時から一緒に暮らす家族の一員です。象使いの住む家のすぐ横に象小屋を建て、日本人がペットとして犬や猫を飼うような感覚で象達と暮らしています。象の体調が悪い時は付きっきりで看病し、誕生日は人間と同じ様にお祝いをします。 -
- また、スリン県には世界で唯一象のお墓があり、象が亡くなるとお坊さんを呼んでお葬式を行い、お墓に納骨します。象使いのグーイ族と象たちは、我々の想像を超えるほどの繋がりと時間を共有しています。
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- ※世界で唯一の象のお墓
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絶滅に瀕するアジア象とグーイ族の重要な役割
- 1950年代にタイにいた50,000頭いた象は、現在、約7,500頭(野生象3,500頭、飼育象4,000頭)まで減少してしまい、タイのアジア象は絶滅危惧種に指定されています。東南アジアの象の生息数は、森林の減少に比例しながら減少を続けますが、象の保護政策がみのり、15年前には1,200頭まで激減していた野生象は3,500頭まで回復しました。
しかし、野生象が安心して住める森は今も減少を続けており、餌を求めた野生の象によって民家や農地を荒らされ、それに困った住人が野生象との軋轢がおき、新たなタイの社会問題になっています。野生の象を増やしていくためには、生物の多様性を深く考え、タイの自然環境保護、緑化対策についても同時に進めていく必要があります。
そして、野生象の生息数を増やすことは、生息地の森林の面積をより広げていく必要があり、とても大きな努力と長い年月の取り組みが必要です。
こうした状況の中で、スリン県の象村に住むグーイ族の人々が象と共に暮らし、アジア象の繁殖を支え、種の保存を守ることことは、絶滅危惧種に指定されているアジア象の将来の増加に貢献することにもつながっています。 -
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皆さまからの資金の使い道
- ご支援いただいた資金は、コロナで失業し、パタヤからスリン県に帰ってきたスックシーファミリーの飼っているクリームちゃんを含む、10頭の象が暮らす象小屋の建設・引越し費用及び象達の餌代として使用させていただきます。
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スリン県観光推進協会石丸久乃さんからメッセージ
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- 生物多様性を守りながら、象と人が共生できる新しい持続可能な社会を築くというスリン県の使命がこのコロナ禍で明確となりました。
世界は、2030年までに達成すべき持続可能な開発目標(SDGs)を掲げています。
スリン県で生物多様性を守りながら、象と人が共生できる新しい持続可能な社会を築くことは、SDGsの多くの目標にも当てはまります。
スリン県の壮大な使命を達成するためには、多くの課題が立ちはだかっています。
今はまだ、象と象使いが共存できる生活環境の確保さえできていないのが実情です。
今はまず、スリン県象村でストレスなく、安心して暮らせる象と象使い達の生活拠点を少しずつ増やしていかなければなりません。
安定した収入源のない象使い達がその夢と理想を諦めず、前に進んでいくその最初の一歩を皆様と一緒にスタートしていくことができれば幸いです。
このクラウドファンディングでスックシーファミリーの決断を大きく後押しすることで、他の象使い達にも大きな新しい一歩を踏み出せる勇気を与えることになればと願っております。
そして、我々観光業に携わるものとして新しい持続可能な観光開発の道標となればと思っております。
どうぞ、ご支援のほど、何卒、宜しくお願いいたします。 -